子供の心のケアの重要性
東日本大震災以降、急激に注目をされるようになってきたのが子供に対しての心のケアです。
2011年以前からも災害と心の傷についての問題は多くの場所で取り上げられては来ましたが、災害ボランティア活動として本格的に活動を大規模に行い、そのときの経験を次回以降の活動に生かしていくようにしたというのはこの震災以降からのことと言えます。
中心となったのは日本心理臨床学会の支援活動委員会で、東日本大震災の直後に被災地に直接赴き多くの人の心のケアにあたり、その内容についてまとめたものを公式サイトなどで公表しています。
大人においても災害や事件・事故に巻き込まれた時に受ける心の傷はかなり大きなものですが、感受性が強くまた親の庇護なしに生きていけない弱い存在である子供にとってはさらに大きなものとなります。
ともすると一生引きずることになる傷になることもありますので、何か大きな衝撃となる出来事に遭遇した子供がいる場合にはすみやかにそのケアと回復に努めていかなくてはいけません。
現在では東日本大震災以降に起こった震災や子供の多く集まる場所で起こった犯罪事件などの現場で、文部科学省の支援のもと数々の団体がその活動にあたっています。
大きなストレスを受けた子供の主な症状
大震災や大事故などに直接巻き込まれた、もしくはその場面を間近に見てしまった子供がいる場合、共通した症状が見られることが報告されています。
災害など非日常的な恐怖に遭遇した時にはまず心理的に大きなストレスを受けることになり、それは身体的な不調も同時に引き起こします。
代表的なものとしては情緒不安定や睡眠障害、理由のわからない体調不良(頭痛・腹痛・便秘・下痢など)があります。
特に小学校低学年くらいまでの幼い子供の場合には嘔吐や食欲不振などを起こすことがしばしばあり、突然発作を起こして大きな声を上げたり、物を投げたり壊したりする攻撃行動が見られたりします。
逆に小学校高学年から中学生くらいになると目に見える発作ではなく内側に抱え込む症状となることが多く、塞ぎこんでほとんど話をしなくなったり、無気力になって生活に活力がなくなったりします。
また神経だけが敏感になり、眠っている時に小さな物音でもビクッとして起き上がったり、ちょっとした大声や恫喝的な言葉を聞いただけでひどく怯えた様子を見せたりするようにもなります。
こうした症状を改善するためには恐怖の原因となることをしっかりとヒアリングし、今は安全な状態なのだということを頭ではなく精神として理解できるようにならなければいけません。
無理に忘れさせようとするのではなく自然に受け入れるように
こうした大きなストレスにより後の生活に大きな支障をきたすようになることをPTSD(外傷後ストレス障害)と呼びます。
あまりにも程度がひどく、学校生活が正常に送れないというレベルになっている場合には一時的に病院などの施設に避難するなど本格的な治療をしていくことが必要になります。
しかしより問題が大きいのは一見普通に生活をしているようで実際には深い心の傷を負っているような場合で、周囲にそのことをうまく説明できず塞ぎこんだ気持のままなんとか生活をしていこうとしてしまいます。
ですが強いストレスが起こった出来事は無理に心に押し込めようとしてしまうと逆に心の傷が深くなるということもありますので、無理に忘れさせようとするのではなく自然にいつもの生活の中で安心させていくようにすることが大切となります。
まずどういった症状を感じているかということを丁寧に大人が聞き取り、その上で普段と同じように笑顏で接するようにしていくということが一番の薬です。